通貨の価値保蔵機能

預金の金利は、銀行同士の貸し借りの金利から銀行のコストや利益を差し引いて決まります。そして銀行同士の貸し借りでは、予想されるインフレ率より高い金利が請求されます。基本原理として、実質的に損をするような金利でカネを貸す銀行はないからです。実際には、銀行がマイナスの金利でカネを貸すケースもあります。

日米の中央銀行は、緩やかなプラスのインフレ率を目標にしながら、しかし預金金利がインフレ率を下回ってしまうような特殊な金融政策をおこなっていますが、これを通常だと思わないほうがいいでしょう。実質価値を維持しようとするだけでなく、実質でも名目でも「価値をさらに増やしながら、価値保蔵をしたい」と願う人たちもたくさんいます。これは欲張りな要求で、現実には失敗して価値を失うリスクもありますが、それでもなお、このレベルの価値保蔵を要求して、あとで後悔する人は本当に多いという現実があります。

日本では、銀行や証券会社などの金融機関の資産運用アドバイスでも、まちがった内容が教えられやすいため、通貨の価値保蔵機能についてきちんと理解している人のほうが少数派であるという、残念な状況になっています。根本問題は、日本政府が国民に対して基本的な金融サービスの利用者としての教育こをおこなわないことにあります。

さてビットコインは、ここまでに整理した通貨の基本機能を、現実に提供できるようになってきました。ビットコインで対価を支払うことで、さまざまなモノを買える店や、インターネット通販サイトが出現し、まだ少しずつではありますが、増えてきています。限定された範囲ではありますが「一般的な決済手段」といえます。現実的な通貨の定義では、特定の種類のモノやサービスの決済にしか使えない資産は、一般的な決済手段ではないとみます。交通系のプリベイドカードが乗車料金にしか使えなかったときは、その残高は通貨ではなかったのです。